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銅メッキ添加剤のDFT計算・性能評価:電子移動量・ESP・反応性#

Advance/PHASE ロゴ

半導体配線や基板製造における銅メッキ工程では、添加剤(促進剤・抑制剤など)の選択が成膜品質を左右します。添加剤が銅表面の特定の結晶面にどのように吸着し、反応を制御するのかを理解することは、次世代プロセス開発において重要です。本事例では、第一原理計算ソフトウェアAdvance/PHASEによる金属表面解析と、NWChemによる分子解析を連携させ、添加剤の面選択的吸着メカニズムを解析します。

Keywords: 第一原理計算 (DFT), 銅メッキ, 添加剤, 電子移動量 (), 福井関数, 静電ポテンシャル (ESP), ESM法

理論背景#

添加剤の吸着特性を評価するため、Pearsonの硬い酸・弱い塩基(HSAB)理論 [1] に基づき、金属表面と添加剤分子間の電子移動量 を算出します。また、分子内の局所的な反応活性部位を特定するために福井関数(Fukui Function)[2] を用います。

吸着メカニズム評価の指標

  1. 電子移動量 (): 金属の仕事関数 と、分子の電気陰性度 、化学的硬度 から算出されます。 ※通常、金属側の硬度 は0と近似されます。 の場合、分子から金属への電子供与(ドネーション)による化学吸着が示唆されます。
  2. 福井関数 (): 求電子的な反応性(電子を与えやすい部位)の指標です。原子の電荷 から算出します。 これにより、添加剤分子のどの原子が金属表面への吸着アンカーとして機能するかを特定できます。

Advance/PHASEによるCu表面の仕事関数評価#

金属側のパラメータとして、Advance/PHASEに実装されているESM法 [3] を用いて、代表的な結晶面であるCu(111)面とCu(100)面の仕事関数 を高精度に算出しました。Cu(111)は原子密度が高く、仕事関数が大きくなる傾向があります。

表1. Advance/PHASEで算出したCu各結晶面の仕事関数

結晶面 仕事関数 [eV] 特徴
Cu(111) 4.81 最密充填面。電子を保持する力が比較的強い。
Cu(100) 4.60 (111)面に比べ原子密度が低く、仕事関数が小さい。

NWChemによる添加剤分子の電子状態解析#

銅メッキにおける代表的な添加剤 [4] であるMPS(促進剤)、SPS(促進剤)、およびPEG(抑制剤)について、NWChem [5] でB3LYP/6-311+G**を用いて量子化学計算を実施しました。得られたHOMO/LUMOエネルギーから、各分子の化学的指標を導出しました。

表2. 各添加剤分子の電子状態パラメータ算出結果

添加剤 役割 HOMO [eV] LUMO [eV] 電気陰性度 [eV] 硬度 [eV]
MPS 促進剤 -6.947 -0.712 3.829 3.117
PEG (n=9) 抑制剤 -6.801 0.024 3.388 3.412
SPS 促進剤 -7.189 -1.421 4.305 2.884

結果と考察#

1. 電子移動量 による吸着の面依存性評価#

Advance/PHASEで得た仕事関数とNWChemで得た分子情報を統合し、面ごとの を算出しました(図1)。解析の結果、すべての分子において仕事関数の高いCu(111)面への電子移動量が大きく、より顕著なドネーション吸着が起こることが示されました。これにより、添加剤が特定の結晶面の成長速度を異方的に制御し、ボトムアップ成長(促進)やレベリング(平滑化)を実現するメカニズムの一端を定量的に説明できました。

ΔN Comparison chart

図1. 各添加剤の結晶面別電子移動量 \(\Delta N\)(イメージ)。(111)面への高い吸着優先度が示唆されます。

2. 福井関数とESPによる吸着部位の特定#

求電子的反応性の指標となる福井関数()を算出した結果(図2)、促進剤(MPS, SPS)では特定の「硫黄(S)原子」が圧倒的に高い反応性を示しました [4]。特にMPSではチオール末端のS原子(S8, =0.51)、SPSでは中央のジスルフィド結合のS原子(S8およびS9, ≈0.32)が吸着アンカーとして機能することが特定されました。一方、抑制剤であるPEGでは特定の原子に反応性が偏らず、全体的に低い値となっています。

Fukui function f- of MPS, SPS, and PEG

図2. 各添加剤の福井関数(\(f^-\))の算出結果。MPSおよびSPSにおける特定の硫黄原子の突出した反応性が確認できます。

また、静電ポテンシャル(ESP)マップ(図3)を可視化することで、抑制剤であるPEGは酸素原子周辺に広範な負のポテンシャル領域を持つことが分かります。この広がりが銅表面全体を被覆し、PEGは抑制膜として機能することが視覚的に示唆されました。

ESP Maps of MPS, SPS, and PEG

図3. 各添加剤の静電ポテンシャル(ESP)分布図。青色が電子豊富な領域(負のポテンシャル)、赤色が電子不足な領域(正のポテンシャル)、緑色は中性領域を示します。可視化にはVESTA [6] を使用し、電子密度の等値面上にESPの値をカラーマッピングして作成しました。

まとめ#

第一原理計算ソフトウェアAdvance/PHASEと量子化学計算パッケージNWChemの連携により、マクロな「吸着の強さ(面依存性)」とミクロな「吸着部位の特定」を評価するワークフローを構築しました。結晶面ごとの仕事関数の高精度計算結果を組み込むことで、添加剤の性能予測と分子設計が可能となります。本手法は、新規メッキ添加剤のスクリーニングや、最適なプロセス条件の探索において効率的なツールとなります。

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参考文献#

  1. R. G. Pearson, "Absolute electronegativity and hardness: application to inorganic chemistry", Inorg. Chem. 27, 734 (1988).
  2. P. Geerlings, F. De Proft, and W. Langenaeker, "Conceptual Density Functional Theory", Chem. Rev. 103, 1793 (2003).
  3. M. Otani and O. Sugino, "First-principles calculations of charged surfaces and interfaces: A plane-wave nonrepeated slab approach," Phys. Rev. B 73, 115407 (2006).
  4. Z. Lai, S. Wang, C. Wang, Y. Hong, G. Zhou, Y. Chen, W. He, Y. Peng, and D. Xiao, "A comparison of typical additives for copper electroplating based on theoretical computation", Comp. Mater. Sci. 147, 95 (2018).
  5. E. Aprà et al., "NWChem: Past, present, and future", J. Chem. Phys. 152, 184102 (2020).
  6. K. Momma and F. Izumi, "VESTA: a three-dimensional visualization system for electronic and structural analysis", J. Appl. Crystallogr. 41, 653 (2008).

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