SLHMC法とQM7およびQM9データベースを併用したイオン液体[Hmim][PF6]の密度計算#
イオン液体の1つである1-hexyl-3-methylimidazolium hexafluorophosphate ([Hmim][PF6])について、自己学習ハイブリッドモンテカルロ(SLHMC)法を用いてNeural Network力場(NNP)を作成し、密度を算出した。
SLHMC法を用いたNeural Network力場の作成#
[Hmim]+と[PF6]–とを1ユニットずつパッキングした38原子系について、SLHMC法を用いてNNPを作成した。
- NNP-MDはNPTアンサンブルで行った。初期力場作成のための第一原理MDは200ステップ行い、その後のNNP-MDはSCF計算毎に10 ~ 160ステップ(2.5 ~ 40.0 fs)行った。
- SCF計算は、Quantum ESPRESSOを使い、ウルトラソフト擬ポテンシャルを用いた密度汎関数法で行った。交換相関汎関数はvdW-DFを用い、エネルギーカットオフは50 Ry、k点サンプリングはΓ点のみとした。
- ニューラルネットワークの構成は30ノード x 2層とし、対称関数には50個のBehler型G2/G3関数を用いた。対称関数のカットオフは5 Åとした。また、第3世代HDNNPで各原子の電荷を再現した。

- Intel Xeon Gold 6330 (2CPU、56コア)を使用して、11時間47分でSLHMCが完了した。最終的な教師データの総数は5000個であった。
- エネルギーの誤差は最終的に2.1 meV/atomまで収束した。イオン液体の密度は一定値に定まらず、1ユニットの学習だけでは十分な精度が得られなかった。
エネルギーの誤差

イオン液体の密度

QM7、QM9データベースの活用#
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作成したNNPの精度を高めるため、QM7およびQM9データベースを用いて事前に作成済みの教師データ(約8000構造)を追加してNNPを再学習した。
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再学習したNNPを使い、3 x 3 x 3 スーパーセル(27ユニット)系にてNNP-MD計算を行った結果、密度が正確に再現されていることを確認した。
- この結果からは、粘性係数や拡散係数も算出可能である。また、原子毎の電荷量も出力されるので、誘電率などの電気的な性質の解析にも有効である。
スーパーセルモデル

イオン液体の密度

密度 / (g/cm3) | |
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計算値 | 1.29 |
実験値 | 1.29[1] |
- [1] Gardas, R. L., et al., (2007) J. Chem. Eng. Data 52(1), 80–88.