Ag-C系のNeural Network力場作成#
本記事は、黒川修准教授(京都大学大学院工学研究科)よりご提供頂いたデータを基に作成しています。
概要#
Neural Network力場を使用して、銀表面に吸着した炭素の挙動を解析する。 先ず、Ag(111)表面に複数のC原子が吸着した構造、および、Ag表面から少し内側の原子層における副格子点にC原子が配置した構造 に対応したNeural Network力場を作成する。作成したNeural Network力場を使用してMonte-Carloシミュレーションを実施して、Ag(111)表面近傍におけるC原子の分布を解析する。
①サンプル構造#
教師データの作成に当たっては、以下の22種のサンプル構造を使用した。
②ランダム構造#
22種のサンプル構造を基にして、ランダム構造を生成した。ランダム構造の生成方法と数は以下の通りである。
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22種のサンプル構造全てについて、原子座標をランダムに変位させた(変位幅:0.2Å) 。 → 4,400構造を生成
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Ag原子のみから成るサンプル構造 および C原子のみから成るサンプル構造については、EAM力場およびReaxFF力場を使用したMD計算のトラジェクトリーをランダム構造に含めた。 → 1,000構造を生成
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AgスラブモデルにC原子を吸着させた系 および 副格子としてC原子を含む系の一部(#13, 14, 19, 20, 22)については、強化学習によりランダム構造を生成した。 → 2,000構造を生成
合計7,400個の構造のうち、SCF計算が正常に収束して 且つ 力の最大値が10eV/Å以下のものをNeural Networkの学習に使用した。使用した構造数は4,744個、総原子数は630,469である。
③第一原理計算による教師データ生成#
Quantum ESPRESSOにて教師データを生成した。SCF計算における計算条件は以下の通りである。
# | 計算条件 | 設定値 |
---|---|---|
1 | 擬ポテンシャル | ウルトラソフト型 (Ag.pbe-d-rrkjus.UPF, C.pbe-rrkjus.UPF) |
2 | 交換相関汎関数 | GGA-PBE |
3 | スピン分極 | 無し |
4 | 波動関数カットオフ | 25Ry |
5 | 電荷密度カットオフ | 225Ry |
6 | k点サンプリング | Γ点のみ |
7 | スメアリング | Gaussian (0.01Ry) |
8 | 収束閾値 | 10-6 Ry |
9 | 格子定数 | Materials Projectより取得した値を使用 |
④Neural Network力場の作成#
以下の仕様にてNeural Network力場を作成した。
- 対称関数には、Chebyshev多項式を使用した。カットオフ関数はtanh3型、カットオフ半径は6Åである。対称関数の数は、動径成分で60個、角度成分で40個である。
- Neural Networkの構造は 2層 x 50節で、活性関数はtanhである。
- フルバッチアルゴリズムを適用し、L-BFGS法にて最適化を実施した。
- 10000エポックの計算の後、エネルギーのRMSEは0.027eV/atom、力のRMSEは0.15eV/Åとなった。
⑤Monte-Carloシミュレーション#
作成したNeural Network力場を用いてMetropolis法によるMonte-Carloシミュレーションを実施した。
解析モデル
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Metropolis法
シミュレーション動画
C原子の位置
- C原子はsurfaceまたはnext sub-surfaceに存在しており、sub-surfaceにはほとんど存在しない。
- C原子数が20個より小さい場合には、next sub-surfaceに優先的にC原子が入り込む。
- C原子数が20個以上の場合には、next sub-surfaceのC原子数はやや減少する傾向にある。その代わりに、surfaceのC原子数が線形的に増大する。
- next sub-surfaceに入り込めるC原子は8個程度が限界であり、それ以上の余剰のC原子は全てsurfaceに存在する。