汎用ニューラルネットワーク力場によるTi-6Al-4Vの体積弾性率の計算#
汎用ニューラルネットワーク力場であるM3GNetとCHGNet、および汎用タイトバインディング法であるThreeBodyTBを用いてTi-6Al-4Vの体積弾性率を計算し、その結果を第一原理計算での計算結果と比較しました。さらに、これらの汎用ニューラルネットワーク力場をファインチューニングしたものを用いて同様の計算を行いました1。
Ti-6Al-4Vについて#
Ti-6Al-4Vは、質量分率で6%のAlと4%のVを加えた合金です。hcpとbccが混在した構造をとります。高い強度と耐食性をもち、かつ加工も容易であることから宇宙航空産業をはじめとした分野で広く用いられています。
計算モデルの作成#
本解析ではhcpとbccの2つの構造のTi-6Al-4Vを作成しました。
hcpについては、Materials Projectより取得したhcpのTiの構造ファイル(mp-46)をもとにして作成しました。まず、mp-46のセル形状を直方晶系に変換し、2×2×2のスーパーセルモデルを作成しました。次に、それぞれの質量分率が適切な値になるようにTiの一部をAlとVに置換しました。
bccについては、Materials Projectより取得したbccのTiの構造ファイル(mp-73)をもとにして作成しました。まず、mp-73のセル形状をプリミティブセルに変換し、3×3×3のスーパーセルモデルを作成しました。次に、それぞれの質量分率が適切な値になるようにTiの一部をAlとVに置換しました。
最後に、作成した2つの構造をそれぞれQuantum ESPRESSOを用いて最適化しました。
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作成したTi-6Al-4V (hcp) | 作成したTi-6Al-4V (bcc) |
計算方法#
体積弾性率 は以下の式で表されます。
ただし、 は系の体積で、 は圧力です。
本解析では、この式をもとにして以下のように体積弾性率を計算しました。
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まず初めに、作成した2つの構造の各格子ベクトルの大きさを、2%小さくした構造と2%大きくした構造を作成しました。
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次に、これらの構造の圧力をQuantum ESPRESSO, M3GNet, CHGNet, ThreeBodyTBのそれぞれを用いて計算しました。
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このようにして得られた体積と圧力の関係と、先ほどの式を用いて体積弾性率を計算しました。
計算結果#
計算の結果を以下の表に示します。
なお、誤差率はQuantum ESPRESSOでの計算結果に対する相対誤差として算出しました。
さらに、計算の精度を向上させるため、自己学習ハイブリッドモンテカルロ法(SLHMC)で作成した教師データをもとに、汎用力場をファインチューニングして計算を行いました。なお、教師データ作成の際の計算条件はhcpとbccともに以下の通りです。
- 訓練の回数は50回
- 1回の訓練あたりのDFT計算の回数は50回
- 温度は1000 K
教師データの数は4329個としました。
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SLHMCでの教師データ作成の際の計算条件 |
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SLHMCのResult画面から教師データをエクスポート |
ファインチューニングした力場での結果を以下の表に示します。
ファインチューニングした汎用力場ではbccに対しては計算精度が向上していることがわかります。
関連ページ#
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弊社のファインチューニングサービスの詳細については以下をご覧ください。 https://www.advancesoft.jp/download/90nanolabo_gnnft/ ↩