汎用グラフニューラルネットワーク力場の比較:リチウムイオン伝導体の分子動力学計算#
汎用グラフニューラルネットワーク(GNN)力場はニューラルネットワークを使うことで従来の力場よりも高い汎用性・精度を実現しています。多くの大学、研究機関、企業によって開発・公開されていますが、アドバンスソフトではLAMMPSを改修して各GNN力場への対応を追加し、Advance/NanoLaboから使えるようにしています。
本事例では各GNN力場の比較の一例として、リチウムイオン伝導体であるLi3OClを対象とした分子動力学計算を行います。多元系でも適用できる汎用性を示しつつ、高温でも破綻することなく計算ができるかどうか確認します。
モデルの作成と計算条件#
Materials Projectから取得したLi3OClの構造ファイル(mp-985585)を元に、2×2×2のスーパーセルモデルを作成しました。このモデルから1つのLiを取り除いて空孔を導入し、39原子のモデルとしました。
分子動力学計算は1500 KのNVTアンサンブルで、1ステップ2 fsで実行しました。Advance/NanoLabo上でDiffusion Coefficientを有効にして実行することで、原子の拡散に関する量が計算・プロットされます。
結果#
各GNN力場を使って分子動力学計算を行い、Li原子の変位の2乗平均を時系列でプロットしました。
いずれも破綻することなく、Li原子の伝導をシミュレーションできました。伝導のしやすさは力場によって違いが出ており、定量的に性能を評価するには第一原理計算との比較が必要になります。このようなシミュレーションは、伝導率の高いリチウムイオン伝導体の組成の探索などに応用することができます。