超高層タワー(センターカラム付きトラス構造)の地震応答解析#
概要#
本事例では、東京スカイツリーを模した超高層タワー(高さ約100mスケール)の3Dトラス構造モデルをPythonスクリプトを用いてパラメトリックに生成し、構造解析ソフトウェア Advance/FrontSTR を用いて大地震(兵庫県南部地震:神戸波)に対する動的応答解析(時刻歴応答解析)を実施しました。
本モデルでは、タワー中心を垂直に貫く中心柱(センターカラム)を配置し、外周のトラス構造と各階層で剛結合した一体型の補強モデルを構築しました。複雑なトラス構造に対して大変形解析(NLGEOM=ON)および適切な時間積分法を適用することで、巨大な地震エネルギーに対して構造物がしなやかに変形して耐え抜く様子を、数値的に安定してシミュレーションすることに成功しました。
解析モデルの作成#
1. ジオメトリとメッシュの生成(Pythonによる自動生成)#
タワーの形状は、根元が三角形(一辺の丸みが強い)、上部にいくにつれて円形へと滑らかに変化する複雑なトラス構造です。これをCAD等を使わずに、Pythonスクリプトを用いて数学的に座標を計算し、節点(NODE)と梁要素(ELEMENT)を直接生成しました。
- 要素タイプ:
TYPE=B2(Advance/FrontSTR仕様の3D 2節点梁要素) - 断面形状:
SECSHAPE=PIPE - 中心柱(センターカラム)の追加: タワー全体の剛性を確保するため、中心ノード同士をZ軸方向に連結した補強柱を配置し、放射状の水平材で外周トラスと剛結合しました。
2. 要素の方向余弦の自動計算#
梁要素(B2)の断面の向きを正しく定義するため、タワーの中心軸から外側に向かって放射状に広がるように、各要素の方向余弦(Direction Cosines)をPython内で自動計算し、要素グループ(!EGROUP)を分けて割り当てました。
固有値解析結果(Modal Analysis)#
動的応答解析を実施する前段階として、固有値解析(!SOLUTION, TYPE=EIGEN)を行い、本トラスモデルの動特性を評価しました。Advance/FrontSTRにより、本モデルの複雑な幾何学的特性を反映した特徴的な振動モードが良好に抽出されています。
以下に、主要な振動モード形状とその固有周波数を示します。
| モード数 | 固有円振動数(rad/s) | 周波数(Hz) | モード形状(ParaView可視化) | 解説 |
|---|---|---|---|---|
| Mode 1 | 4.987 | 0.794 | ![]() |
1次曲げモード (X方向)。タワー全体のしなり。 |
| Mode 3 | 22.422 | 3.569 | ![]() |
2次曲げモード。タワー中部からしなる。 |
| Mode 8 | 49.123 | 7.818 | ![]() |
特徴的なねじれ(Torsional)モード。断面変化特性を反映。 |
Advance/FrontSTRは、このような複雑な幾何学的特性を持つトラス構造物の高次振動モードも精度よく抽出できることが確認できました。
解析アプローチ#
本解析では、固有値解析で得られた動特性と、Advance/FrontSTRの強固な非線形ソルバーを活用し、高精度な動的シミュレーションを実現しました。
- レイリー減衰の自動計算と適用:
固有値解析結果(1次モード・3次モードの固有円振動数)から、目標減衰定数 (2%) を満たすレイリー減衰係数()をPythonスクリプトで算出し、動解析用ファイル(
.cnt)の!DAMPINGパラメータに適用しました。 - 時間積分の安定化と大変形解析:
大地震時の激しい変形挙動を数値的発散なく安定して解くため、動解析の手法を
NEWMARK法()に設定し、さらに幾何学的非線形性を考慮するNLGEOM=ONを適用しました。
解析条件(動解析)#
- 解析手法: 時刻歴応答解析(
!SOLUTION, TYPE=STATIC_DYNAMIC) - ステップ1(静解析): 自重(重力加速度 9.8 )を下向きに負荷。
- ステップ2(動解析):
- 入力地震動: 兵庫県南部地震(JMA神戸 NS成分)。
kobe_wave.csvから最初の60秒間(サンプリングレート 50Hz)を抽出。 - 入力方向: 水平(X軸)方向。
- 単位変換: gal () を Advance/FrontSTR上の単位 () に合わせるため、荷重係数を
10.0に設定。
- 入力地震動: 兵庫県南部地震(JMA神戸 NS成分)。
解析結果の可視化#
計算結果(.pvtuファイル)をParaviewで可視化しました。
-
変位の確認:
カラーバー(Magnitude)を用いて最大変位を確認したところ、大きな地震波パルス(約33秒付近)入力時に頂上付近で最大約 12,000 mm (12m) の変位が観測されました。巨大な地震エネルギーに対して、一体化された強靭なトラス構造が弾性的にしなって耐え抜いている妥当な結果が得られています。

-
波形グラフと3Dモデルのアニメーション:
地震波が入力された時のタワーの3Dアニメーションを示します(30秒辺りから大きな揺れが始まります)。
結論#
本事例により、Pythonを用いた複雑なトラス構造の自動モデリングと、Advance/FrontSTRの大変形(NLGEOM=ON)・非線形動的解析機能(NEWMARK法)を組み合わせることで、極めて過酷な直下型地震に対する超高層構造物の挙動を、数値的破綻なく安定してシミュレーションできることが実証されました。
関連ページ#
- 構造解析ソフトウェア Advance/FrontSTR
- 解析分野:構造
- 産業分野:建築土木


