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梵鐘の構造音響弱連成解析#

音響解析ソフトウェア Advance/FrontNoise 事例 構造解析ソフトウェア Advance/FrontSTR 事例 汎用プリポストプロセッサ Advance/REVOCAP 事例

構造音響弱連成解析について、梵鐘を例にとり、図1に示す解析実施手順に沿って紹介します。
構造解析は時刻歴応答で、音響解析は周波数領域で実施します。

図1 解析実施手順

構造解析(Advance/FrontSTR)#

構造解析ソフトAdvance/FrontSTRを使用し、梵鐘を打突した後の自由振動解析を実施します。

解析モデル#

  • 梵鐘を下図のような 1/2 対称モデルで表します。
図2-1 構造解析モデル

構造材料物性#

  • 梵鐘はリン青銅1からなるとします。
項目
ヤング率 1.10×105 [Mpa]
ポアソン比 0.33
密度 8.80×10-9 [t/mm3]

境界・荷重条件#

  • 竜頭部分を完全拘束。
  • 対称面には対称境界条件を付加。
  • 撞座にインパルス荷重を負荷。その後、自由振動。
  • レイリー減衰を付加。
図2-2 境界・荷重条件

構造解析結果#

  • 代表点における打突方向の変位時刻歴を示します。
図2-3 代表点の Z 方向変位時刻歴

フーリエ変換及びマッピング(Advance/Revocap_PrePost)#

振動解析結果のフーリエ変換及びマッピングには、Advance/Revocap_Prepostの付属スクリプトを使用します。
※Advance/Revocap_PrePost付属スクリプトは、Advance/FrontNoise およびAdvance/FrontSTR のユーザーにもご提供いたしております。

フーリエ変換#

  • 振動履歴をフーリエ変換し、周波数域に分解します。代表点の変位時刻歴をフーリエ変換した結果がこちらです。
図3-1 代表点のZ方向変位振幅の周波数特性

マッピング#

  • 構造モデルの境界面におけるフーリエ変換結果を、二重極音源として音響モデルの境界面にマッピングします。 マッピング前後を比較した図を示します。 構造解析結果が適正に音響モデルにマッピングされていることが確認できます。
図3-2 マッピング前後の値比較

音響解析(Advance/FrontNoise)#

音響解析ソフトAdvance/FrontNoiseを使用して、周波数領域の音響解析を実施します。

解析モデル#

音響解析モデルとして、次のような解析領域を考えます。

図4-1 音響解析モデル

音響材料特性#

  • 音響材料は空気であるとします。
項目
密度 1.225 [kg/m3]
音速 340.0 [m/s]

境界条件#

項目 条件
梵鐘の表面 マッピング結果の二重極音源
ドーム面 無限境界
地面 完全反射境界
対称面 完全反射境界

計算周波数#

  • 周波数域 5~300 [Hz] を 5 [Hz] 刻みで計算実行します。

音響解析結果#

受音点における音圧レベルの周波数特性#

図4-2 受音点位置


図4-3 受音点における音圧レベルの周波数特性


各周波数における音圧レベルの分布#

図4-4 周波数 65 [Hz] の時の音圧レベル [dB] の分布
図4-5 周波数 205 [Hz] の時の音圧レベル [dB] の分布
図4-6 周波数 275 [Hz] の時の音圧レベル [dB] の分布

おまけ#

鐘の中央真下の位置では、音波が打ち消しあって音が小さくなります。
前述の解析結果でも、鐘から離れた位置よりも、鐘の真下の位置の方が音圧が小さくなっていることが分かります。

1922年、日本を訪れていたアインシュタインは知恩院を訪問した際に、実際に鐘の真下に立ち、僧に鐘をついてもらって、鐘の真下では音が小さくなる現象を自ら体験したそうです。

関連ページ#


  1. JX金属株式会社様 銅合金(条)特性一覧より https://www.jx-nmm.com/products/alloy/copper/