キャビティ内非均質ガスの熱放射解析#
解析概要#
吸収性ガスと火炎による放射伝熱解析は燃焼器、ボイラー、人工環境評価などの分野で実際に用いられています。 特に、非等方散乱がある非均質で非灰色媒体の熱放射は、熱対流解析と合わせて燃焼器の高精度設計に とって必要不可欠なツールです。本事例では熱放射のベンチマーク解析を行い、熱放射計算モデルを検証します。
計算条件の概要#
計算領域はモデル図のような一辺の長さ1の立方体領域を取ります。 立方体の中は非等方散乱源となる非均質ガスが充填されています。 メッシュの分割数はです。
シミュレーションの計算条件を以下のように設定します。
1.境界条件
壁面は温度境界条件を与え、黒体とします。
2.非均質吸収係数の分布
分布は以下のように与えます。 $$ \tau \left( x, y, z \right) = a \left( 1- \frac{ \left| x \right|}{0.5} \right) \left( 1- \frac{ \left| y \right|}{0.5} \right) \left( 1- \frac{ \left| z \right|}{0.5} \right) + b \qquad (1) $$
3.放射モデル
本解析はモンテカルロ法を用いて行いました。 モンテカルロ法は多数の放射エネルギー粒子を各点から周囲に射出し、1個1個の散乱・吸収挙動を追跡して放射エネルギー輸送の物理的過程を模擬します。
4.非等方散乱の位相関数
非等方散乱の位相の分布を以下のように与えます。 $$ \Phi \left( \theta \right) = 1 + \beta \cos \theta \qquad \qquad (2) $$
熱平衡の条件で媒体を解き、媒体および壁面上の放射熱流束を計算します。 ベンチマーク解析として式(1)の係数、、式(2)のおよび壁面の境界条件を以下のように設定したcaseで ref[1]との比較を行います。
case | 散乱アルベド | a, b | 壁面境界条件 | |
---|---|---|---|---|
case2 | 0.9 | 0 | , | 6低温壁 |
case3 | 0.9 | 1 | , | 1高温壁/5低温壁 |
case4 | 0.9 | -1 | , | 1高温壁/5低温壁 |
case番号は比較のためref[1]に対応させてあります。
解析結果#
熱放射による表面熱流束の分布は図1のようになります。
解析結果のベンチマークとの比較を図2に示します。 case2は全体で等温であるため放射強度が一様で、吸光度の空間分布の検証になります。 一方case3、4では1つの高温壁から温度勾配があり、高温壁から離れると温度が下がり放射強度も下がっていきます。 いずれの結果もref[1]の結果とよく一致しています。
適用例#
Advance/FrontFlow/redは汎用的で大規模な対流ー放射連成機能を 有しています。 熱放射解析を用いた適用例として例えば以下のようなものが考えられます。
- 燃焼機器の設計
- 火災時の人体への影響評価
参考文献#
[1] Hsu P. F., Farmer J. T., Benchmark Solution of Radiative Heat Transfer within Nonhomogeneous Particpating Media Using the Monte Calro and YIX Method, ASME-T, J. Heat Transfer, Vol. 119(1997), 185-188