Advance/FrontFlow/redの専用サイトを開設いたしました。
事例集を機能別に整理して見やすくなっております。
密度差に起因する流体不安定性#
概要#
流体力学における基本的な流体の不安定性として Kelvin-Helmholtz 安定性と Rayleigh-Taylor 不安定性を取り上げます。密度が異なる流体が層を成しているときに、水平方向に速度差を与えると Kelvin-Helmholtz 不安定性が発生します。Rayleigh-Taylor 不安定性は、密度の大きい流体から密度の小さい流体に重力などの力が働くときに発生します。
解析条件#
平板空間で密度の異なる 2 つの層(水素と二酸化炭素)を考えます。
項目 | 設定 |
---|---|
流体 | 圧縮性流体(理想気体) |
乱流モデル | なし(直接計算) |
水素の分子量 | 0.002 kg/mol |
二酸化炭素の分子量 | 0.044 kg/mol |
圧力 | 101,325 Pa |
温度 | 273.15 K |
重力加速度 | 9.8 m/s |
Kelvin-Helmholtz 不安定性の計算では、密度が小さい層が 1 m/s、大きい層が 0.25 m/s で水平方向に動いているとして、水平方向に周期境界条件を与えます。
Rayleigh-Taylor 不安定性の計算では、密度が小さい層の上に密度が大きい層があり、重力が下向きに働くものとします。また、初期擾乱として界面に対して適当な波長の波を与えます。
解析結果#
速度差により Kelvin-Helmholtz 不安定性が成長して波型の構造(図 1)ができます。このような波型の構造は雲(波状雲)にも見られますが、Kelvin-Helmholtz 不安定性により生じたものです。
Rayleigh-Taylor 不安定性の成長により、マッシュルーム構造(図 2)ができます。超新星爆発のような星内部の物質混合過程にとって Rayleigh-Taylor 不安定性は重要な役割を果たしていると考えられています。身近な例では、水槽に水よりも重いインクなどの液滴を垂らすことで生じます。
どちらの不安定性も線形段階では解析的に取り扱うことができるので、例えば、解析的に求められる初期擾乱の波長と不安定性の成長率の関係などを使ってシミュレーションのコード検証にも利用されています。