案内板溶接部の流体圧力による応力解析#
目的#
この解析の主な目的は、流体の流れが構造物(案内板)に及ぼす影響を調べることです。
具体的には、案内板の溶接部にどのような応力が発生するかを、流体の圧力変動と連動させて評価しています。
弊社流体解析ソフトウエアAdvance/FrontFlow/redと 弊社構造解析ソフトウエアAdvance/FrontSTRの 流体・構造連成解析により、案内板溶接部の応力解析を行っています。
解析対象#
図1は、解析に用いた案内板と、その周辺の流路のモデルを示しています。
図1の左図は、流体が流れる管路全体のモデルで、メッシュ(格子)を切ってあります。このメッシュを使って、まず流体計算を行います。
図1の右図は、案内板の溶接部付近を拡大したモデルです。この部分に流体が衝突したり、回り込んだりすることで複雑な圧力変動が発生し、それが構造的な応力につながると考えられます。
図 1. 解析対象図
流体解析結果#
図2は解析結果より、LES非定常流れ圧力変動の周波数分析 (案内羽根後縁、上部)を示します。
中央上部のグラフは、特定の観測点(案内羽根の後縁、上部)における流体圧力の周波数分析の結果です。横軸が周波数(Hz)、縦軸が圧力(Pa)を表しています。
グラフには複数のピークが見られ、特定の周波数で圧力が大きく変動していることがわかります。これらのピーク周波数に構造物の固有振動数が近い場合、共振が発生して大きな応力や変位を引き起こす可能性があります。
図 2. LES非定常流れ圧力変動の周波数分析(案内羽根縁、上部)
図3に示す解析結果の4つの図は、流体の速度と圧力の分布を色で可視化したものです。
瞬時速度(左): ある一瞬における流体の速度分布です。案内板の周りで速度が変化している様子がわかります。
平均速度(左から2番目): ある程度の時間で平均化した流体の速度分布です。瞬時の速度分布に比べて滑らかで、全体的な流れの傾向を示しています。
瞬時圧力(右から2番目): ある一瞬における流体の圧力分布です。案内板にぶつかる部分で圧力が高いことなどがわかります。
平均圧力(右): ある程度の時間で平均化した流体の圧力分布です。こちらも瞬時の圧力分布に比べて滑らかで、構造物に作用する平均的な力を把握することができます。
図 3. 速度および圧力の解析結果
構造解析結果#
図4は、前述の流体解析から得られた圧力データを用いて行った構造解析より変位を示しています。 解析時間の設定は、流体解析において、非常に短い時間間隔(0.5μ秒)で圧力のデータを計算し、 1[sec]間の時系列を出力しています。このように細かい時間刻みで計算することで、流体圧力の急激な変動や高周波成分を正確に捉えることができ、構造物への影響をより精密に評価できます。
案内板の変形(変位)の様子を色で示しています。赤や黄色で示されている部分は変位が大きいことを意味します。 この図から、流体圧力によって案内板がどのように歪むかが視覚的に把握できます。
図 4. 構造解析結果、変位
図5は、流体-構造連成解析によって得られた応答(振動速度)の周波数分析結果です。横軸が周波数(Hz)、縦軸が振動速度(mm/s)を表しています。 このグラフは、流体から受けた力によって、案内板がどのような振動モードで、どの周波数で大きく振動しているかを示しています。複数のピークが存在し、それぞれの周波数で構造物が応答していることがわかります。
図 5. 連成解析周波数分布 弾性(係数50、観測点2)
図6は、連成解析で得られた平均的な応力の分布です。色が高応力であることを示しており、赤や黄色になっている部分が応力が集中している箇所です。
これらの図から、案内板のどの部分に応力がかかりやすいか、特に溶接部で応力集中が起きていないかを評価することができます。これは、設計の妥当性を検証し、強度上の問題がないかを確認するために非常に重要な情報です。
図 6. 連成解析結果―平均応力の分布
謝辞#
本研究は、株式会社 電業社機械製作所 技術研究所様 ご協力の元で実施しています。
株式会社 電業社機械製作所 技術研究所の関係者の皆さまに、心より感謝申し上げます 。
関連ページ#
- 流体解析ソフトウェア Advance/FrontFlow/red
- 解析分野:流体
- 産業分野:建築土木