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Advance/FrontFlow/redの専用サイトを開設いたしました。

事例集を機能別に整理して見やすくなっております。

Advance/FrontFlow/redの専用サイトを開設いたしました

遠心圧縮機の空力騒音解析#

目的#

本解析の目的は、羽根付ディフューザーを備えた遠心圧縮機の共鳴現象の解明とその予測です。特に、ラージ・エディ・シミュレーション (LES) を用いた圧縮性流れの大規模非定常解析により、圧縮機内部空間の流れを把握し、共鳴のメカニズムを詳細に解明することを試みています 。

解析対象#

解析には、工業プラント等で実際に使用されている多段圧縮機ではなく、単段のモデル圧縮機を使用しています(図1) 。 このモデル圧縮機は、入口配管、インペラ(羽根車)、ディフューザ、リターンチャネル、出口部で構成されています 。

解析は、騒音レベルが高い共鳴点 (回転数 9240 min-1) と、騒音レベルが低い非共鳴点 (回転数 11400 min-1) の2つの回転数で実施とします。圧縮機の流量係数はどちらの場合も0.07です 。

解析対象

図 1. 解析対象図

この単段の圧縮機諸元を表 1にまとめています。

表 1.圧縮機諸元

項目
インペラ直径 300mm
流量係数 0.07
回転数 9240min-1, 11400min-1
レイノルズ数 105

解析メッシュ#

図2は、この単段のモデル圧縮機の解析メッシュ図を示します。 六面体要素で構成された格子解像度の異なる 2タイプのメッシュを作成しています。 粗い計算格子は約90万要素、細かい計算格子は約450万要素です。

解析メッシュ図

図 2. 解析メッシュ図

CFD解析条件#

圧縮性流体解析をAdvance/FrontFlow/redを用いて行っています。 CFD解析条件を表 2にまとめています。

表 2.CFD解析条件

項目 設定
基礎方程式 圧縮性ナビエストークス方程式
乱流モデル ラージ・エディ・シミュレーション(LES)
差分スキーム 時間、空間ともに2次精度
時間積分法 Adams-Moulton法
作動流体 空気
壁面境界条件 滑りなし
流入条件 質量流量一定
流出条件 圧力一定

解析結果 速度分布と静圧分布#

以下に、回転数11400min-1のときの解析結果を示します。 図3は、速度分布[m/s]および静圧分布[Pa]を細かい格子(450万要素)と粗い格子(90万要素)で並べて示しています。

解析結果図

図 3. 解析結果 速度分布と静圧分布

・速度分布 :粗い格子(90万要素)と細かい格子(450万要素)を比較すると、ディフューザー翼での剥離流れに違いが見られ、細かい格子の方が、より詳細な流れの挙動を捉えられています。

・静圧分布 :粗い格子の場合、インペラインペラ翼前縁で格子に起因する斑模様が見られますが、細かい格子ではこのような傾向は見られません。この結果より、格子解像度が流れ場の性質に影響を与え、LES解析においては格子解像度が高い方が実際の流れ場に近い、より良い結果が得られることがわかります。

解析結果 圧縮機の特性曲線#

図4は、解析結果から得られた圧縮機の特性曲線(効率ηad、圧力係数(理論ヘッド)τ2、圧力係数(断熱ヘッド)Ψ)を 回転数11400min-1と9240 min-1毎に実験値と比較したものです。

解析結果図

図 4. 解析結果 圧縮機の性能曲線図

・9240 min-1と11400min-1の両方において、450万要素の結果の方が90万要素の結果よりも実験値からの推定性能曲線に近づいていることが確認出来ます。 これより計算格子の解像度を上げると、圧縮機性能の予測精度向上に寄与することがわかります。                                                                                                                                                                                

解析結果 ディフューザー流路内の圧力変動#

図5は、ディフューザ流路内のある評価点位置における圧力スペクトルを示しています 。

解析結果図

図 5. 解析結果 ディフューザー流路内評価点の流路内の圧力スペクトル

支配的な周波数成分は翼通過周波数(BPF)と呼ばれ、回転数9240 min-1の場合BPFは2618[Hz]、 回転数11400min-1の場合BPFは3230[Hz]です。 計算格子規模に関わらず、BPF成分とその高調波成分でピークが現れているのがわかります。

まとめ#

本研究では、遠心圧縮機における騒音発生メカニズム解明のため、AFFrを用いて、ラージ・エディ・シミュレーション(LES)解析を実施しました 。粗い計算格子(90万要素)と細かい計算格子(450万要素)を用いて共鳴点と非共鳴点の計算を行い、圧縮機の性能評価、流れ場の格子依存性、ディフューザ流路での圧力変動について検討を行いました。解析の結果、粗い計算格子でも圧縮機の特性曲線はある程度の精度で評価でき、細かい格子を用いることでより高精度な評価が可能であることが示されました 。

謝辞#

本研究は、株式会社日立プラントテクノロジー(現:日立製作所)と独立行政法人海洋研究開発機構(現:国立研究開発法人海洋研究開発機構)との共同研究として実施されました。 株式会社日立プラントテクノロジー(現:日立製作所)と独立行政法人海洋研究開発機構(現:国立研究開発法人海洋研究開発機構)の関係者の皆さまに、心より感謝申し上げます 。

(参考文献) 国立研究開発法人 海洋研究開発機構JAMSTEC 様資料、産業レポート https://www.jamstec.go.jp/es/jp/project/sangyou_report/H20_HPT_jp.pdf

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