サブチャンネル内の気泡合体解析#
概要#
高温高圧二相自然循環炉の熱流動システムの評価手法を開発するために、六フッ化硫黄(気相)とエタノール(液相)という代替流体を用いて、高温高圧二相自然循環炉の模擬試験装置内のサブチャンネルで気泡が発達する挙動を解析した例をご紹介します[1]。
図1 模擬試験装置 図2 解析対象(サブチャンネル)
出典:[1] 革新的実用原子力技術開発費補助事業 平成18年度成果報告書概要版「高温高圧二相
自然循環炉の熱流動シテム評価手法の開発」
解析条件#
図3 計算格子とガス発生位置
解析条件 | 設定値 |
---|---|
模擬燃料棒本数 | 2×2 |
模擬燃料棒外径 | 10mm |
模擬燃料棒ピッチ | 16.5mm |
配置 | 正方配置 |
流路寸法 | 16.5mm×16.5mm |
温度 | 一定 |
乱流モデル | k-εモデル |
気相 | 六フッ化硫黄 |
液相 | エタノール |
液体の流入速度 | 0.99m/s |
ガス発生量 | 2.67×10-4kg/s |
気泡径 | 0.1mm、0.2mm、0.4mm、0.8mm、1.5mm、3mm、5mmの7グループ |
格子数(1/2モデル) | 81,150 |
垂直方向の格子数 | 541 |
解析手法#
①グループ化とドリフト速度の計算
気泡径によって抗力・揚力・壁面潤滑力・乱流拡散力等が変わるため、気泡群は気泡径毎に異なる運動をします。
しかし、全ての気泡の運動方程式を解くには計算機の負荷が大きすぎます。
そこで、大小さまざまな気泡群を気泡径の範囲でグループに分けて、各気泡径グループ毎の運動を解きます。
図4 大小さまざまな気泡群のグループ化
さらに計算時間を短縮するため、各気泡径グループの運動が力学的平衡状態にあると仮定して、各気泡径グループについて、気相全体の平均速度からの速度差を計算します。
図5 気相全体の平均速度からの速度差
②各気泡径グループの質量保存式の計算(ポピュレーションバランスモデル)
気泡合体による気泡径分布の変化を求めるために、気泡径グループ毎の質量保存式を解きます。グループ数に制限はなく、i番目の気泡径グループは以下の式で表現されます(式の説明は省略させていただきます)。
③気泡合体モデル
気泡がマイクロバブル化すると汚れや気泡の帯電が気泡合体に影響を与えますが、大きい気泡を扱うものとして、次の力学モデルを使用します[2]。
図6 気泡合体の力学モデル
参考文献:[2] Chen, P., J. Sanyal and M.P. Dudukovic, “Numerical Simulation of Bubble Columns
Flow: Effects of Different Breakup and Coalescence Closures,” Chem. Eng. Sci.,
60, 1085(2005).
④気泡合体のソースターム
気泡合体のソースタームは、乱流運動・浮力・層流せん断による衝突頻度と液膜が臨界厚さに達するまで2つの気泡が接触する割合の積で計算します。
解析結果#
チャンネル平均気泡径の高さ方向分布に対する実験結果と計算結果の比較を図7に示します。計算結果は、サブチャンネル内で上昇に伴って気泡径が増大する実験値を再現できています。
図7 チャンネル平均気泡径の高さ方向分布に対する実験結果と計算結果の比較[1]
平均気泡径の水平方向分布に対する実験結果と計算結果の比較を図8に示します。計算結果は、下段では気泡径が2mm以下の比較的小サイズであるため壁近傍に集まる「鞍型分布」を形成し、下流側に発達するにつれて合体によって気泡が大型化してサブチャンネル中心に集まる「砲弾型分布」を形成する実験結果を再現できています。
(a) 実験結果 (b) 計算結果
図8 平均気泡径の水平方向分布に対する実験結果と計算結果の比較[1]
本解析でわかったこと#
気泡合体モデルにより、サブチャンネル内で発達過程の気泡径分布を概ね再現することができました。
関連ページ#
- 気液二相流解析ソフトウェア Advance/FrontFlow/MP
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