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移動重合格子による球の水面への突入解析(超高速、V=1000m/sで斜め入射)#

解析の概要#

移動重合格子による移動物体周りの流体解析機能と気液二相流解析機能を併用した例を紹介します。重合格子機能では、静止した背景格子を先に用意し、移動物体周りの計算格子をサブ格子として別途用意します。物体の移動に際しては、移動格子の外縁領域と背景格子の間で情報交換がなされます。移動格子の移動経路は並進と回転を組み合わせることが可能です。

解析条件#

静止した水面に秒速1000m/sの球形状が斜めに衝突するケースを解析しました。

解析結果#

1列めは気相液相の両者を含む全密度で可視化例であり、重合格子が移動する様子も重ねて表示しています。球の後方に空気巻き込み(エアレーション)による空洞が形成されるのが見てとれます。また、液相には密度の圧縮性を僅かに許す状態方程式[1]が対応するため、密度は最大で1200kg/m3程になることもわかります。

2列めは水蒸気の体積分率の様子です。気相の中を通過する際に生じる衝撃波により球の周囲は加熱されており、球が着水する瞬間に水面が瞬時に沸騰したときの水蒸気が球の後方に貯留します。その後に水中の球の後方は低圧沸騰を起こし、キャビテーションによる気相発生が見られます。よって、エアレーション部分とキャビテーションによる水蒸気が複雑な経緯を経て混合し、球の後方に形成されることがわかります。

3列目は圧力分布です。気相中を落下の際には、球の前方に衝撃波が形成され、水面と衝突する手前で既に高圧状態となっており、水面に衝突すると桁違いに高圧な状態が形成され、大気圧の1000倍程まで上昇することがわかります。また、水中に没した後も、球の前方は圧縮されるために400K以上の高温になっているのが見てとれます。このように、気液界面と気相と液相の間を対象物体が移動する際の、圧力の高低差が非常に大きな流動現象を予測することが本ソフトウェアでは可能です。

密度分布 水蒸気分布 圧力分布 温度分布

参考文献#

[1] Le Métayer, O., Massoni, J., and Saurel, R., “Elaborating Equations of State of a Liquid and Its Vapor for Two-Phase Flow models,” Interna-tional Journal of Thermal Sciences 43 (2004), pp. 265–276.

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