コンテンツにスキップ

FOCUS-i MHD(磁気流体力学)解析機能のご紹介#

MHD方程式系とFOCUS-iソルバー概要#

  • FOCUS-i に、磁場と導電性流体の複雑な相互作用をシミュレーションするための MHD(磁気流体力学)解析機能が追加されました。

  • この機能は、FOCUS-i が従来から持つ圧縮性 Navier–Stokes 方程式ソルバーに、磁束の保存式(誘導方程式)とローレンツ力(J×B)の項を組み込んだものです。

  • 未知変数として密度、運動量、全エネルギー、磁束密度ベクトルを扱い、これらすべての保存則を連立して解きます。数値スキームには、有限体積法、Rusanov 法(風上化)、2 次精度 TVD スキーム、時間陽解法を採用しています。

  • FOCUS-i 既存の強力な並列ソルバー基盤上で動作するため 、大規模な MHD 連成解析にも対応可能です。

以下に、本機能を用いた 2 つの主要な解析事例をご紹介します。

解析事例1:1次元 MHD Brio–Wu 衝撃波管テスト(基礎検証)#

  • 目的

    • MHD 解析ソルバーの基本的な精度と安定性を検証するため、1 次元のMHDリーマン問題として知られる「Brio–Wu 衝撃波管テスト」1を実施しました。
  • 内容

    • これは、初期状態として左右に異なる物性値(密度、圧力、磁場)を設定し 、その後の流体の挙動を解く問題です。
    • 解析的には、MHD 特有の急峻な衝撃波、コンタクト不連続、アルヴェン波、スロー波、ファスト波といった複雑な波動が一斉に生成される、標準的なベンチマーク問題です。
  • 結果

    • 下図に示す通り、FOCUS-i による解析結果(密度、圧力、速度、磁場 By のプロファイル)は、既知の文献値と非常に良好な一致を示しました。

この結果から、FOCUS-i の MHD ソルバーが、数値的な粘性(誤差)の影響を最小限に抑えつつ、MHD 特有の主要な波動を高い精度で安定に捕捉可能であることが確認されました。

1次元 MHD Brio–Wu 衝撃波管テスト条件#

1次元 MHD Brio–Wu 衝撃波管テスト解析結果#


密度



圧力



磁束密度By



速度

解析事例2:円柱周りのマッハ6超音速MHD流れ(応用解析)#

  • 目的
    • 磁場が超音速の流れ場に与える「MHD効果」を実証し、実工学的な問題への適用性を示します。
  • 内容
    • マッハ数 6 の超音速流が通過する円柱について、以下の 2 ケースを比較しました。
    • ケースA (B = 0): 磁場がない場合(通常の流体解析)
    • ケースB (B ≠ 0): 流れ場に対し垂直方向に一様な磁場(0.3 テスラ)を印加した場合(MHD 解析)
  • 結果
    • 磁場の有無によって、衝撃波の形成に明確な違いが現れました。
    • ケースA (B = 0): 円柱前方には、典型的な離脱衝撃波が形成されます 。
    • ケースB (B ≠ 0 ): 磁場が存在すると、導電性の流体(プラズマなど)中に誘導電流が発生します。この電流と磁場の相互作用(ローレンツ力 J×B) 、および誘導電流によるジュール加熱 が発生します。
  • MHD効果の可視化
    • このジュール加熱により、衝撃波の背後にあるガスの温度と圧力が上昇します 。その結果、下の可視化結果(左:圧力、右:温度) に示すように、磁場がある場合(上段) の方が、ない場合(下段) よりも衝撃波が物体から遠ざかった位置で安定していることが分かります。
    • これは「衝撃波のスタンドオフ距離(物体と衝撃波の距離)が増大する」という、典型的な MHD 効果を正確に再現していることを示しています 。

円柱周りのマッハ6のMHD流体解析例#

  • 上段が磁束密度 B を印加した場合

  • 下段が B = 0 の場合

  • 右側が温度場(単位:K)、左側が圧力場(単位:Pa)

  • 磁束密度は紙面に垂直方向に 0.3 テスラと設定

  • 上流の気流マッハ数は M = 6

  • B が存在するほうが衝撃波は物体から遠ざかる位置でバランスするのが見てとれる

FOCUS-i MHD機能のまとめ#

FOCUS-i の MHD 機能は、お客様の高度な解析ニーズに応える以下の特長を備えています。

  • 強力な連成解析: 圧縮性 Navier–Stokes 方程式と MHD 方程式の連成解析をシームレスに実行可能です。

  • 高い拡張性: 1 次元の基礎的な物理検証から、2 次元・3 次元の実工学的な問題まで、幅広く適用可能です。

  • 大規模計算対応: 実績ある FOCUS-i の並列計算フレームワークを活用し 、大規模なMHD シミュレーションにも対応します。

関連ページ#


  1. Brio, M. and Wu. C. C.: An Upwind Differencing Scheme for the Equations of Ideal Magnetohy-drodynamics, J. Comp. Phys., 75 (1988), pp. 400-422.