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ISP-47 ThAI 試験国際標準問題に対する検証解析#

自社開発した過酷事故時原子炉建屋・格納容器の熱流動解析コード Advance/BAROC を用いて、ISP-47 ThAI 国際標準問題 [1] の圧力、温度、ヘリウム濃度、水蒸気凝縮などの 3 次元挙動を解析しました。

【試験内容】#

格納容器を模擬した円筒形状の装置に下記 ①~③ の順番で気体を流入し、ヘリウム濃度の時系列変化を確認します。

① A からヘリウムを流入させる。

② ヘリウムの流入停止後 B から 水蒸気を流入する。

③ B の水蒸気流入停止後、C から 水蒸気を流入する。

[1] International Standard Problem ISP-47 on Containment Thermalhydraulics, Final Report, NEACSNIR(2007).

【解析条件】#

NO. 条件項目 設定個所及び設定量
1 計算体系
総格子数:約 11 万格子、分割数(X=34、Y=34、Z=94)、1 格子サイズ 0.1m
2 数値計算法
ECBA 法
3 状態方程式
SRK 法
4 乱流モデル
k-ε モデル
5 考慮するガス成分
N2 , O2 , H2O ,He
6 対流項の差分スキーム
一次精度風上差分法
7 時間刻み幅制御
1.0 秒
8 Courant 数の最大値(計算結果)
水蒸気注入フェイズで最大 197.9
9 行列計算法
ILUT/BiCGStab(l) 法
10 試験装置内初期条件
圧力:101,325 Pa
温度:293.15 K 、気体成分 :N2 77.5 %、 O2 20.6 %、H2O 1.9 %(湿度 60 %) 、He 0.0 %
流速:0m/s
11 流入個所と流入方向
① 上部 He 流入個所
  Z+(上)方向、座標:r=1.15m Z=5.8m
② 上部 H2O 流入個所
  Z+(上)方向、座標 :r=1.15m Z=5.0m
③ 下部 H2O 流入個所
  中心軸方向、座標:r=1.28m Z=1.8m
12 流入気体と流入量※
① He+H2O:7.5×10-4 [kg/s] 、② H2O: 3.2×10-2 [kg/s] 、③ H2O:3.5×10-2 [kg/s]
13 流入時間※
① He+H2O:0~2,700 [s] 、② H2O:2,700~4,700 [s] 、③ H2O:4,700~5,700 [s]
14 解析対象時間
7,700 [s]
15 境界条件
・外気を温度固定とし外壁と内壁の温度を熱伝達モデルで計算
・内部構造物は断熱

[備考]凝縮や熱流動、物質拡散を考慮して計算を実施しました。

※ 実験では速度計測用の凝縮水の水滴を生成するため、0~2700 秒の間ヘリウムとともに約 [kg/s] の水蒸気が上部注入口より注入しており、本解析でも模擬しています。

【測定箇所】#

これらの条件で計算を実施しました。

計算時間はシングルコアで13時間弱でした。

【解析結果】#

解析結果は試験結果と比較し、他コード同様におおむね良好な結果が得られました。しかし、6,000 秒以降は試験結果と異なっており、これについては今後の課題とします。

解析結果は試験結果と温度の絶対値について改善の余地がある結果ですが、試験装置上部温度と下部温度に差が確認できました。よって解析結果は試験結果と同様に温度の成層化を再現しています。

[2] 格納容器内熱流動解析手法の実機適用性検討に関する報告書_ISP-47 総合解析_独立行政法人原子力安全基盤機構(2006)

ヘリウム濃度分布動画を下に示します。

2,700 秒までヘリウムを流入し上部プレナムに成層化している状況が再現されています。

4,700 秒まで上部から水蒸気を流入しても成層化を維持していますが、下部から水蒸気を流入すると成層化が崩れ、反応容器内のヘリウム濃度は均一になります。

まとめ#

  • BAROC コードの性能・適用性の検証を目的とし試験解析を実施し、現時点で他のコードと同等の性能を有している事を確認しました。

  • 原子炉建屋と同様に 3 次元形状の熱流動解析を高速に計算可能なソフトで有る事を確認しました。ただし、凝縮が支配的な場合は時間刻み幅を大きくすると解析精度が低下します。

  • BAROC の解析結果は 4,700 秒までおおむね実験結果と合っているが、それ以降のヘリウム濃度は他コードと同様に均一化する点が明らかになりました。実験結果との差異については今後各種モデルの見直しを検討する予定です。

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