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3次元SSI(地盤・構造物相互作用)を考慮した超高層タワーの動的耐震解析#

概要#

本事例は、有限要素法 構造解析ソフトウェア Advance/FrontSTRを用いた、超高層トラス構造タワー(東京スカイツリーを模擬)と杭基礎、および周辺地盤を統合した3次元地盤・構造物相互作用(SSI: Soil-Structure Interaction)解析のシミュレーション例です。

Web公開されている従来の「超高層タワー(センターカラム付きトラス構造)の地震応答解析」事例からの発展形として、以下の解析技術を導入しています。

  1. 固有値解析と動的解析の自動連携: 固有値解析によって得られた低次固有振動数から、複層地盤・構造物全体系のレイリー減衰係数を自動計算・フィードバックするワークフローの構築。
  2. 基盤励振と動的時刻歴応答解析: 地震波加速度を積分・ドリフト補正した変位波形をモデル底面に強制変位として直接入力する動的アプローチ。
  3. 吸収境界条件による波動散逸の模擬: 有限領域の地盤境界における反射波の影響を低減するため、側面に粘性境界(吸収境界)条件を設定。
  4. 多点拘束(MPC)による特殊工法の模擬: 基礎周辺におけるナックルウォール工法を模擬するため、自由度結合方程式(!EQUATION)を用いたマトリクス結合制御の自動生成。

Advance/FrontSTRが持つスケーラビリティ活用の前提となる、実務に即した高度な連成耐震解析モデルの構築手法を示します。


解析対象およびモデル化#

構造物および周辺地盤を一元的にモデル化した、ハイブリッド有限要素メッシュ(ハイブリッドFEMモデル)を自動生成スクリプトにより構築しています。

モデル

モデリングの視覚的ポイント : 上記のワイヤーフレーム図において、「タワー内部(青)」で示されている梁要素が、本解析の制振評価の特徴である「心柱(SHINBASHIRA)」に相当します。ソリッド地盤をワイヤーフレームで透過表示させることで、地中に隠れた杭基礎からタワー外殻、そして内部の心柱に至る立体的なアセンブリの相互位置関係が把握できます。

構造部位 / 地盤層 採用要素タイプ グループ名(EGRP) モデル化の工学的意図
タワー外質・トラス梁 2節点一次梁要素(B2) DIR_GRP_1 〜 DIR_GRP_923 MITC定式化要素によりせん断ロッキングを回避し、テーパーを伴うトラス構造を正確に模擬。断面方向余弦を精密に制御。
心柱(しんばしら) 2節点一次梁要素(B2) SHINBASHIRA タワー中心部に独立して配置されるRC造の制振柱を模擬。
構造制御ダンパー 2節点一次トラス要素(T2) DAMPER 心柱と外周塔を結ぶオイルダンパー構造を想定し、高減衰材料セクションを割り当て。
杭基礎 2節点一次梁要素(B2) PILE 地盤ソリッド要素内に埋め込まれた大口径深礎杭を模擬。
複層周辺地盤 8節点六面体一次要素(CHEXA8) GROUND_SILT 〜 GROUND_REKI 表層シルト層、砂層、硬質粘土層、礫層(支持層)に至る、墨田区押上周辺の地下速度構造を推測した4層の成層地盤モデル。

モデル

多点拘束(MPC: !EQUATION)による工法模擬#

杭基礎および地中壁頂部において、剛体変位挙動およびマトリクス結合を模擬するため、以下の多点拘束方程式を節点グループ間で自動生成しています。

本解析では、マスター節点(基礎中心)の水平変位・回転変位と、一定半径内にある周辺地盤(スレーブ節点)の3軸変位を拘束方程式によって結合し、実構造物の堅固な基礎定着状態をFEM上で表現しています。

GROUND_WALL(ナックルウォール)のモデリング : 本モデルでは、基礎外周のナックルウォール(地中連続壁)が配置される領域の節点群を GROUND_WALL グループとして定義しています。この GROUND_WALL に対して、タワー根元をマスター節点とする多点拘束(MPC)を放射状に展開することで、超高層タワー特有の巨大な転倒モーメントに抵抗する「地盤と一体化した剛健な基礎ブロック」の力学挙動を、計算負荷を抑えつつ再現しています。


解析種別とシミュレーション・ワークフロー#

本解析は、固有値解析フェーズと、静・動連続動的解析フェーズの2つの独立した FrontSTR 実行ワークフローから構成されています。

Python制御スクリプトの実行フロー#

  • Phase 1: メッシュデータ(Skytree_SSI.msh)の自動生成
  • Phase 2: 固有値解析の実行(!SOLUTION, TYPE=EIGEN)
  • 0.log から1次および3次の固有振動数()を自動抽出
  • Phase 3: レイリー減衰係数()の自動計算
  • Phase 4: 静・動連続解析の実行(!SOLUTION, TYPE=STATIC_DYNAMIC)
  • 反力置換法を用いて自重による初期状態を作成後、神戸波の加速度波形を入力し、Newmark-β 法(陰解法)による直接時間積分動的解析を実行

データの重要設定#

  • !SOLUTION, TYPE=STATIC_DYNAMIC : 静・動連続解析を行うための宣言です。
  • 動的解析ステップ(!STEP, TYPE=DYNAMIC)での耐震解析: Newmark-β(陰解法)による直接時間積分動的解析を実行します(!DYNAMIC, METHOD=NEWMARK, BETA=0.25, GAMMA=0.5)。

解析条件および材料物性定義#

解析制御ファイル(.cnt)における主要なFrontSTRカード形式の指定仕様です。

荷重および地震波入力条件#

  • 地震動入力(!ACCELERATION + !AMPLITUDE): 動解析ステップにおいて、モデル底面の境界節点グループ(BOTTOM_NODES)に対して、兵庫県南部地震(神戸波)から算出した変位時刻歴の時間依存テーブル(AMP=EQ_WAVE_X, Y, Z)を適用し、基盤への X・Y・Z 3成分同時の強制変位入力を行います。

散逸境界(吸収境界:!VDB)の設定#

有限領域地盤の側面における波動の不自然な反射を抑え、無限遠方へのエネルギー散逸を模擬するため、側面の面グループ(SIDE_FACES_***)に対して吸収境界(!VDB)を設定しています。

設定形式#

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!VDB, GRPID=3, MATERIAL=MAT_SOIL_SILT
  SIDE_FACES_SILT

MATERIAL パラメータには、境界に隣接する土層セクションの名称を指定し、材料特性(密度・弾性係数)に応じた最適な粘性ダンパー拘束が適用されます。

材料物性値(Rayleigh減衰の適用)#

全材料(STEEL, CONCRETE, 各種 MAT_SOIL)に対して、SI単位系で質量密度(!DENSITY)、弾性係数(!ELASTIC)とともに、固有値連携によって算出した減衰係数を組み込んでいます。

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  !MATERIAL, NAME=MAT_SOIL_SILT
  !ELASTIC
    1.0e8, 0.45
  !DENSITY
    1500.0
  !DAMPING, ALPHA=[自動計算されたalpha], BETA=[自動計算されたbeta]

※ 土層パラメータのヤング率(100.0(表層シルト層)〜2000.0 MPa(支持層の礫層))、ポアソン比(0.3〜0.45)、密度(1.5e-9 〜 2.1e-9 )は、強震時における表層地盤の剛性低下を考慮した実効値を想定しています。

※ ダンパー要素(DAMPER_VDB)には、剛性比例を主とした高い粘性拘束()を個別に付加し、制振効果を表現しています。

シミュレーション結果のアニメーション#

以上の設定を行いシミュレーションをしました。その結果を示します。

  • 下段のグラフは地震波

自動化スクリプトによるCAE効率化の意義#

本事例の最大の特徴は、提供された一連の統合一元化Pythonスクリプトによる解析ワークフローの自動化にあります。

通常、地盤・構造物相互作用(SSI)動的連続解析を行う場合、以下の手作業が個別に発生し、CAEエンジニアの大きな負担となります。

  1. 地盤ソリッドメッシュと、タワー梁メッシュの幾何学的 snapping(節点共有化)およびMPC条件の机上計算。
  2. 固有値解析結果からの振動数手動抽出と、外部表計算ソフト等でのRayleigh係数計算。
  3. 静解析制御ファイルと動解析制御ファイルの別個の管理と、境界条件ID(GRPID)の整合性確認。

本事例で使用しているスクリプトを実行することで、格子状の複層地盤メッシュ内に複雑な三次元タワー構造基礎を正確に自動「スナップ(節点埋め込み)」し、固有値解析の実行、減衰の自動フィードバック、自重の初期応力を引き継いだ動的震動解析までが、コマンド一つで 一気通貫で完了します。これは、実務における設計変更や地震動パラメータサーベイ(多数の波形を用いたケーススタディ)において、工数削減と品質向上に寄与します。


まとめ・今後の展望#

本シミュレーションにより、Advance/FrontSTRが持つアセンブリ構造対応機能 および 時刻歴応答解析機能が 、実インフラの巨大な地盤・構造物連成耐震評価に有効であることが実証されました。


参考文献#

関連ページ#