Advance/FrontFlow/redの専用サイトを開設いたしました。
事例集を機能別に整理して見やすくなっております。
Taylor–Green渦の減衰解析(検証計算)#
概要#
Taylor–Green渦は、単純な初期渦が渦伸長によって小スケール構造を生み、乱流へ遷移して減衰していく流れです(Brachet et al. 1983)。 初期条件と周期境界だけで構成できるため、乱流解析における数値スキームの散逸特性を評価する標準的なベンチマークとして広く用いられています。 本ページでは、Advance/FrontFlow/red(以下、AFFr)を用いて非圧縮条件(Re = 1600)のTaylor–Green渦を解析し、渦構造の発達と、運動エネルギー・散逸率の時間変化をDNS(Dairay et al. 2017)と比較した結果をご紹介します。
解析モデル#
解析領域は1辺2πLの立方体で、6面すべてを周期境界とします。 要素は一様な6面体要素で、総メッシュ数は16,777,216(2563)です。
初期速度場は次式で与えます。
v = −V0 cos(x/L) sin(y/L) cos(z/L)
w = 0
表1に解析条件を示します。
| 項目 | 設定 |
| 圧力速度連成 | SIMPLEC法 |
| 空間離散化 | 2次中心差分 |
| 時間離散化 | 1次精度オイラー法 |
| 乱流モデル | なし |
| レイノルズ数 | Re = V0L/ν = 1600 |
| 時間刻み | Δt* = 0.005 |
評価量は、運動エネルギーEkの減少率 −dEk/dt と、エンストロフィーζから求める物理散逸 2νζ です。 両者の差は、スキームが持つ数値散逸の目安となります。
解析結果#
渦構造の発達#
AFFrによる解析結果より、無次元時間t = 8、9、10における渦構造を図1に示します。 渦構造はQ値の等値面で表し、速度の大きさで色付けしています。 t = 8では、太い渦管が折れ曲がりながら崩壊し始めています。散逸率がピークとなるt = 9前後では細い渦管が多数生成され、t = 10では細かな渦管が領域全体に広がっています。
t* = 0.5から12までの渦構造の時間変化を動画1に示します。 初期の滑らかな渦が渦管へと発達し、それらが崩壊して細かな渦構造へ遷移していく過程が捉えられています。
DNSとの比較#
t* = 14.5までの計算結果をDNSと比較します。運動エネルギーの時間変化を図2に示します。運動エネルギーはDNSと約2%以内で一致しています。
散逸率の時間変化を図3に示します。 散逸率のピーク付近の時刻はDNSとよく対応しており、ピーク値の差は約8%です。
エンストロフィーの時間変化を図4に示します。 小スケール構造が発達する遷移期には、全散逸の約20%を数値散逸が担っており、エンストロフィーのピーク値はDNSより低くなります。
表2に主な評価量をまとめます。
| 項目 | DNS | AFFr |
| 散逸率ピーク値 | 0.0129 | 0.0118(−8%) |
| 散逸率ピーク時刻 | t* ≈ 9.0 | t* ≈ 9.0 |
| エンストロフィーピーク値 | 10.28 | 7.61(−26%) |
| 数値散逸の割合(t* ≈ 8.5) | - | 約20% |
参考文献#
- M. E. Brachet, D. I. Meiron, S. A. Orszag, B. G. Nickel, R. H. Morf and U. Frisch, “Small-scale structure of the Taylor–Green vortex”, Journal of Fluid Mechanics, 130, 411-452 (1983)
- T. Dairay, E. Lamballais, S. Laizet and J. C. Vassilicos, “Numerical dissipation vs. subgrid-scale modelling for large eddy simulation”, Journal of Computational Physics, 337, 252-274 (2017)